「あべ、」
「あぁ?」
「偉いね。」
「はっ・・?」
世界史の時間。私は先生の話なんて頭に入ってこなくて机に突っ伏した。なんとなく、頭が痛かった。だから授業が頭に入ってこないんだろうけど、とりあえず私は目を閉じた。でも、こうしてるだけだと頭の痛さだけ感じるから更に悪化してく気がして私はふっと横を向いた。横には野球部の阿部が座っている。阿部はいつも黒板を真剣に見て勉強している。私なんて頭痛くなくても授業にやる気は出せないのに、阿部はいつでも真剣だ。なんて偉い奴なんだろう。なんて思ったら言葉に出していた。
「だって、いつもちゃんと勉強してるもん。」
「当たり前だろ。」
「んー・・・そっかぁ。」
「お前、いいのか?ノートとんなくて。」
「頭いたいー。」
私がそう言うと、阿部は少し目を見開いて「大丈夫かよ。」と言った。あぁー優しいな、こんな私に心配なんてしてくれるのか。とボーっと阿部を見ていると、阿部は少し困ったような顔をしてプイっと顔を黒板の方へ逸らした。私はなんかしたのか?なんて思ったけど、今はそれを問い出す体力がなくて私は阿部を不思議な目で見ているだけにした。
よく見ると、阿部は結構かっこいい。垂れ目が可愛い(なんて本人に言ったら怒られそうだけど。)あぁ、そういえば私って阿部が好きなんだった。なんて今更ながら思い出した。いつからかは分かんないけど、みんながよく言うやつで「気づいたら好きになってた」ってな感じだ。それを忘れてたってどういうことなんだ・・・少し自分に嫌気がさしたけど、それも頭が痛いせいにした。阿部は野球をしているとき、すっごいかっこいいんだ。キャッチャーとか目立たないとか思ってる奴もいるかもしれないけど、キャッチャーがいなきゃ試合なんてできないんだ。ピッチャーだってボールは投げられない。キャッチャーは頭を使うポジションなんだと、昔野球をやってたお父さんに聞かされたことがある。だから、私は阿部がスゴイと思う。だから好きってわけじゃないんだけどさ。とにかくスゴイんだ。私が頭の中でそんなことを考えていると阿部が再びこっちを向いた。
「な、なんだよ。」
「んー?何がぁー?」
「んな、見んなよ。」
そうやってまた黒板に目を逸らした。あぁ、そっか照れてるのか阿部は。なんて思うと少し面白くて私は声に出さず笑った。多分、はたから見たらニヤついてるように見えるかもしれないけど。阿部が照れるとかそんなないなぁーなんて考えると、ちょっと新しい一面が見れた気がして嬉しくなった。私はニヤケ顔を隠すために、横を向いていたのをやめて、自分の腕で顔を隠すように、机へと顔を戻した。あぁー、こうするとやっぱり頭が痛い。なんて感じていると頭に誰かの手が軽く乗ったのを感じた。
「あのよ、早く治せよ。」
聞こえてきた声は阿部のもので、私はまた嬉しくなった。
「あべ、」
「んっ?」
「好きだよ。」
頭に乗っている手が少しずつ暖かくなっていくのがわかった。
その手が熱くて
(私の顔が熱くなっていくのは頭が痛いせいにしよう。)
080224